大学に進学すると、学生生活はあっという間に過ぎ去り、今度は就職活動に突入します。
その時になって、「どんな会社に行こうかな」では、かなり遅いです。
もし、就職できたとしても、それが「自分の行きたかった会社なのか?」という重大な問題に直面する人が例年います。
では、第1希望の会社に首尾よく就職するためには、どうすればいいでしょうか。
それは、大学受験の前から大学卒業後の就職を意識し、その上で志望する大学を決めていくという考え方をすることです。
実は、「就職に強い大学」「就職するのに有利な大学」があるのです。今回の記事を見て、自分の入りたい会社に行くためにも、就職活動で優位な位置につけることが可能な大学はどんな大学か、見ていきましょう。
「就職に強い」大学は、どんな大学?
「就職に強い大学」には、幾つかの特徴があります。
それは、企業から見て、ここの大学から採用しておけば間違いない、という信用度の高い大学です。これが第一に挙げられます。昔から伝統的に例年採用しているような、指定枠と言っても言い過ぎではない大学があります。
<大学の偏差値が高い>
大学の偏差値が高いと、受験勉強を一所懸命に続け、思考力や集中力を養ってきた人たちが多数いることになります。まず、大概は好きではないであろう勉強を一所懸命に続けてきたこと自体が評価され、採用する企業は「この人なら、仕事も真面目にやってくれるだろう」という見立てをします。
これに加え、思考力、集中力、忍耐力、分析力、判断力など諸々の点で鍛えられているため、こういう偏差値の高い大学、言い換えれば学力が高い大学から採用しておけばいい、という考え方になります。
<先輩後輩のパイプがある>
例年いつも採用する大学から入ってくる新人には、会社で必ず面倒をみてくれる同じ大学出身のOBやOGがいます。大学の先輩からすれば、自分の大学のカワイイ後輩のためなら一肌脱ごう、という心情的なつながりが生まれるため、コミュニケーションも取りやすく、仕事がスムーズに進みます。
同じ大学の先輩が多数いれば、それだけ助けてもらえたり教えてもらえたりするにも気持ちの上で安心でき、頼りがいもあります。同窓生が多数集まると「学閥」が形成され、一つのグループができていきます。
<大学が就職支援に熱心>
続いて、大学に入学してすぐに就職のための説明会や相談会を開催して、学生の就職活動の技量を向上させてくれるような大学も企業から見れば好印象があります。
大学1年生の時から様々な資格取得を応援するなど、大学から社会への橋渡しを積極的に実践する大学なら企業も受け入れようと考えます。
また、大学の就職課が熱心に企業と連絡を取り、「ウチの学生をよろしくお願いします」と頼んでくれば、全く相手にしないということでもなく、少しは話しくらい聞いてあげようと思うようになります。
<新しい時代に対応している>
また、近年の各方面の先端技術や新しい時代に適応した能力を輩出し始めている伸び盛りの大学も、企業や社会から着目されています。
IT産業やバイオ技術、高齢者向けの看護介護などを始めとして、企業や社会が求める人材を育成するために新たな学部や学科を設置している大学は、より専門的な知識と技術を身につけられます。そうなると、単に入試の難易度や例年の決まった大学だけではなく別の視点も必要ということになってきます。
就職に有利な大学10選
例年発表される大卒求人倍率ですが、2023年卒は1.58倍でした。これは、昨年度の1.50倍より高い倍率です。簡単にいえば、募集人数158人に対して応募しようとする学生が100人の割合だった、ということになります。
このように、数字の上では就職しやすい状況になりつつありますが、果たして採用された企業が第一志望だったかどうかは別です。
<有名企業からの採用実績が高い大学10選>
東京大学や京都大学などの旧帝国大学以外で、有名企業からの採用実績が高い大学10選を紹介します。
- 東京工業大学
国内で最高レベルの工業大学が国立東京工業大学です。大学院へ進学する学生が多いため、大学院卒業まで見越した学習カリキュラムが準備されています。大学院に進学してから専門となるコースを選ぶことができ、進路選択もしやすいのが特徴です。
研究センターも多数あり、より研究意欲の高い学生が集まります。これにより、研究力の高さも評価されているのが東京工業大学です。日本有数の大企業へ就職できるため、しっかり研究活動をすれば将来有望です。
- 一橋大学
国内で最古の社会科学系大学が国立一橋大学です。商学部、経済学部、法学部、社会学部の4学部からなり、社会科学を研究する総合大学では東京大学や京都大学と並ぶ学識レベルを誇ります。
1学年あたりの人数が約千人で、やや小規模な大学です。それだけに、少人数ならではの教育方針を持ち、教員1名当たりの担当する生徒数が少ないことで、充実した研究活動ができます。
そのため企業からも高く評価され、就職活動にも伝統的に強みがあります。社会科学系の大学としては、一橋大学より高い評価の大学は見当たりません。
- 電気通信大学
国立の電気通信大学は、コンピューターやプログラミングなどの情報技術を研究できる大学としては学費も安いため、全国から学生が多数集まってきます。充実した学習環境が揃っている大学として、一般的な知名度以上に企業からの評価が高く、情報系のスキルを身につけたい人にはオススメの大学です。
学部は、情報系、融合系、理工系の3学部が存在します。
習得する技術と知識が多数あるため、在学中は課題をこなすことで大変な面もありますが、それだけに習得したものを活かす就職という場面では当然に強く、今後も評価は簡単には下がらないと見られています。
- 名古屋工業大学
名古屋工業大学は、工学部のみの国立の単科大学です。愛知県には自動車など輸送機器を扱う企業が多数あり、就職先としても有利です。工学部出身者を地元の大学から入れようという企業も少なからず存在し、その点でも就職に強い大学といえます。
実験などの研究に注力できる環境が整い、設備面に優れた大学としての定評もあります。講師や先輩と一緒に実験ができ、より専門的知識やスキルが身につきやすいので研究室でも成果を残せる機会に恵まれています。
このような環境から、就職に有利な大学となるのは当然で、今後も有望な大学の一つに数えられます。
- 九州工業大学
九州工業大学は、地方にある国立の工業大学としては名古屋工業大学と双璧の大学です。 カリキュラムが十分に揃い、より専門的な知識と技能を学びたい入学志望者が多く、研究活動に打ち込めます。
近年は衛星開発プロジェクトやAIプログラムなど、他大学の一歩先を行く専門的な研究で評判を得ています。このような次世代の産業に着目したカリキュラムが充実していることから、例年の就職状況もよく、学部卒、大学院卒ともに高い就職率を誇ります。
官営八幡製鐵所の開設に伴って大学が創建され、長年にわたり北九州工業地帯へ人材を送り込んできた伝統を持つ歴史的にも存在感の高い大学です。
- 国際教養大学
国際教養大学は2004年に開学された、比較的新しい大学です。授業がすべて英語で行われることや、1年間の海外留学が必修となっていることなど、国際化時代に対応した環境を整えた新しいタイプの公立大学です。
在学中のカリキュラムも厳しめと言われ、世界で通用する人材を育成することに特化した大学として高い語学力が培われる環境があります。それだけに、語学に関しては即戦力の期待が高まっています。
秋田県にある大学のため知名度はまだ高くありませんが、教育充実度と国際性で企業間でも一躍注目を浴びてきています。
- 慶應義塾大学
慶應義塾大学は10学部を持つ総合大学で、私立大学の雄と言われています。約26000人もの学生を有し、全国トップレベルの学力層が集まります。それだけに、研究力の高さも全国トップレベルの大学です。
大企業での役員数も多く、学生時代から就職後までの満足度は特に高い大学となっています。
また、慶應義塾大学からの国家公務員は、2021年度では一般職が71名、総合職が68名。教育公務員除く国家公務員が85名となっています。
慶應義塾大学の出身者は「三田会」の名でよく知られ、大きな学閥を有しています。
- 早稲田大学
早稲田大学は日本の私立大学の中でも長い伝統があり、学部も13学部がある総合大学です。ほとんどの授業が学部をまたいで受けられるのが早稲田大学の強みで、所属している学部以外の授業にも出て、幅広い教養を身につけることができます。
また、国家公務員には就職先として2021年度で一般職が65名、総合職が43名で、例年多くの人材を輩出しています。
サークル活動も非常に盛んで、多くの学生が在籍することから全国各地の出身者と交流できるのも魅力です。大規模なだいがくのため、就職活動でもOBやOGと連絡して有利に進めることが可能です。
- 東京理科大学
東京理科大学は理工系学部が8学部もある、理工系に特化した大学です。在学中に多くの資格取得が可能で、多くの資格試験合格者が存在することから、就職に強いという評判が高い大学です。
東京理科大学の卒業生は民間企業への就職が多い一方で、国家公務員試験の合格者数も少なくありません。ただし授業の難易度は高めなので留年率が高い大学でもあります。それだけ研究レベルが高く、悪い意味でのテキトーさは通用しません。
未だに「早慶上理」の4大学(早稲田・慶應・上智・東京理科)という社会的な定評は残っているので私立の理工系大学では最難関です。
- 豊田工業大学
豊田工業大学は私立大学で、工学部のみの単科大学です。トヨタ自動車株式会社の社会貢献活動の一環で創立された大学で、就職においても高い実績があります。
体験的な学習を重視している大学であり、実習科目が多めという特徴があります。大学のサポート体制も整備され、学生が就職してからも役立つ技能を習得できる強みを持っています。
地元の愛知県豊田市に拠点を置く輸送機器を中心とする工学系の企業に就職する際には非常に高い評判があります。また全国的にも自動車関連の工場では大きな知名度があり、就職に強い大学として例年上位にランクづけされています。
リクルートワークス研究所
https://www.works-i.com/research/works-report/2022/220426_kyujin.html
大学だけでなく研究内容も大事
いくら「就職に強い大学」といっても、自分が進もうと思っていない学部へ無理に進んでも、学生生活はツラい思いをしてしまいます。できれば自分に合った学部へ行きたいところです。
その一方で、特に学部選びに決定打がなく、どの学部に入ろうとも一所懸命に取り組み、とにかく就職で良い道を選択したい、という人もいます。
ここで、近年の「就職に強い大学」「就職に有利な大学」では、どんな学部に力を入れているか、どんな学部が社会や企業から評価されているか、そのあたりを見て、考えていく材料にしてみてはどうでしょうか。
<理系学部は優位>
工学部、理学部、理工学部、農学部、医学部、歯学部、薬学部などの理系学部や、看護学部、保健医療学部、心理学部などの実質的に理系の知識を必要とする学部は、企業や社会から歓迎されます。
企業側も理系の学生なら知識や強みをほぼ把握できるので、採用した後も扱いやすい、教育しやすい面があります。学生も、その知識や技能を活かして就職先でも何をできるのか大体わかります。
もちろん文系学部でもそれぞれの専門性はありますが、どちらかといえば理系学部のほうが専門性が強く、仕事にも直結する傾向があります。このことから就職でも理系学部が強く、就職でいい所に行きたいと考える受験生は理系の学部を志望すると有利になります。
<先端技術は人気が高い>
IT産業やバイオ技術は年々進化していますが、その進化をいち早く取り込んで経営をするのが当たり前の時代になっています。多くの企業は、文系出身か理系出身かを問わずそういうテクノロジーを考え、「どうやって先端技術を社会に活かすか」を提案できる人材が必要です。
現代の企業においては、例えば仕事でパソコンなどを使うにあたり、次々と更新される技術や知識を社内の人たちに合わせて説明したり仕様を変えたりできる人は歓迎されます。また食品や農業、林業、漁業においてはバイオ技術が不可欠で、様々なシーンでその技術を使えるように提案できる能力が求められています。
たとえ文系の学部でも、企画や営業や総務などで能力を発揮できるなら、必ずしも文系だから不利とは言い切れません。学部としては技術面に秀でた学部が歓迎されますが、社会全体の潮流を読み取るリテラシー能力と、その技術をどう活用できるか考えることのできる思考力を大学で培っているかが問われます。
<語学力は今後も必要>
国際化社会で非常に重要なのが語学力です。
不景気の時代において、企業は人件費を削る覚悟を強いられることが度々あります。しかし簡単に社員を解雇できない時代でもあります。その結果、調整の対象とされやすいのは、新人採用です。
専門性の高い理系学部の新人採用は戦力として必要なため、文系学部からの募集を減らす企業が多い傾向があります。
このような時代の流れを見ると、語学力が高く、国際化社会に適応することが可能な人ならば、文系の学部でも就職できるチャンスはまだまだ十分にあります。
まとめ
今回は、「就職に強い大学」「就職に有利な大学」について説明しました。
学力が高くて伝統的に評価されている大学、OBやOGのパイプが太い大学、就職活動のサポートに熱心な大学、新しい時代に適応する学部や学科を整えている大学などが就職でうまくいく大学となっています。また、就職に有利な大学は理工学系が多く、学力の高い大学が上位に名を連ねています。
ただし、自分が将来に就職するためには、大学の名前だけではなく時代の先端技術を理解したり、語学力も求められていることを知った上で大学選びを考えていきましょう。