「旧帝国大学」と呼ばれる七つの大学は、日本を代表する国立大学としてよく知られている大学群です。略して「旧帝」「旧帝大」とも呼ばれます。
それらの大学の中でも「医学部」は特に難易度が高く、医師・研究者としても非常に優秀な人として見られます。それだけに、旧帝国大学の医学部に進むのは簡単ではありません。
今回は、旧帝国大学の医学部を紹介するとともに、どんな位置づけにあり、受験勉強にはどのくらいのレベルの高さを求められているかも説明いたします。
京都大学医学部
旧帝国大学の医学部
- 東京大学医学部
- 京都大学医学部
- 大阪大学医学部
- 名古屋大学医学部
- 東北大学医学部
- 九州大学医学部
- 北海道大学医学部
どの大学も歴史と伝統があり、研究実績で群を抜いています。
日本の大学の医学部は、歴史の古い医学部ほど難易度が高いと言われています。これらの旧帝国大学は、国内の学校制度が整えられていく過程で、かなり早い時代から創設されています。
それだけに、19世紀後半〜20世紀初頭にかけて創設された旧帝国大学の医学部は最も上位に位置する大学群と言えます。
<格が違う旧帝大学の医学部>
日本の医学部医学科は大きく4つの年代に分かれて設立されており、日本の医療の発展を目標に国家主導で大学の医学部の設立が進みました。基本的に、設立年代の古い方が格上に見られるような形になります。
国公立大学の医学部は全国で51校です。国立大学が42校、公立大学が8校、準大学が1校となっています。これらの国立大学の医学部に私立の医科大学を合わせて、「格付け」をしてみると、以下のような表になります。
医学部の大学群 | 大学群のグループ呼称 | 設立年代 |
---|---|---|
東京大学・京都大学・大阪大学・名古屋大学 東北大学・九州大学・北海道大学 | 旧帝国大学医学部 | 1886年~ 1939年 |
慶應義塾大学・東京慈恵会医科大学・日本医科大学 | 私立旧制医科大学 (私立医大御三家) | 1920年~ 1926年 |
千葉大学・岡山大学・金沢大学・新潟大学・熊本大学 長崎大学・(京都府立医科大学) | 旧制六医科大学 (旧六) | 1922年~ 1923年 |
東京医科歯科大学・広島大学・鹿児島大学・弘前大学 群馬大学・信州大学・鳥取大学・徳島大学 | 新制八医科大学 (新八) | 1946年~ 1948年 |
神戸大学・横浜市立大学・名古屋市立大学・岐阜大学 三重大学・札幌医科大学・福島県立医科大学・山口大学 大阪市立大学・奈良県立医科大学・和歌山県立医科大学 | 旧設公立医科大学 (旧設) | 1947年~ 1950年 |
順天堂大学・昭和大学・東京医科大学・日本大学医学部 大阪医科大学・久留米大学・岩手医科大学 関西医科大学・東京女子医科大学・東邦大学 | 旧設私立医科大学 | 1942年~ 1950年 |
秋田大学・旭川医科大学・山形大学・筑波大学・愛媛大学 浜松医科大学・滋賀医科大学・宮崎大学・富山大学 島根大学・佐賀大学・大分大学・高知大学・福井大学 山梨大学・香川大学・琉球大学・(防衛医科大学) | 新設医科大学・国公立 | 1970年代 |
杏林大学・北里大学・川崎医科大学・帝京大学 聖マリアンナ医科大学・愛知医科大学・埼玉医科大学 金沢医科大学・藤田保健衛生大学・兵庫医科大学 福岡大学・獨協医科大学・東海大学・近畿大学 | 新設医科大学・私立 | 1970年代 |
東北医科薬科大学・国際医療福祉大学 | 新設医科大学・2000年 以降 | 2016年~ |
以上のような格付けになります。
旧帝国大学の医学部を筆頭に、実績の高い大学の医学部を出ると、就業後のキャリア形成にも有利と言われています。
また、臨床や医療よりも医学の研究に一生を費やしたいなら、その最高位は「医学部教授」でしょう。医学部の教授になりたい場合は、やはり旧帝国大学医学部の出身者が断然に優位になります。学閥の恩恵を受けられたり、主要な大学病院や関連病院で上位のポストも狙えます。
ただし、医学部の伝統的序列は絶対的なものではありません。
私立大学医学部は授業料が非常に高額です。そのため学費が安いほど受験生に人気が高く、倍率や偏差値も上がる傾向にあります。その点でも医学部の伝統的序列はあまり重視されません。特に、開業医を目指すならどこの大学というよりも先ず合格できる大学を探すのが優先になります。
大阪大学医学部
旧帝国大学医学部の偏差値ランキングは!?
実際の大学入試となると、気になるのは偏差値です。格付けよりも直接合否に関わるため、現実に難易度がどれくらいであるかを知っておかなければなりません。
<入試の偏差値はどれくらいか>
以上が医学部の偏差値一覧です。
やはり医学部だけあって、他の学部と比べるとかなり難しいことがわかります。
名古屋大学医学部
合格にはどれくらい勉強が必要?
医学部というだけでも難易度は非常に高く、しかも受験科目数の多い国立大学で、さらに最高峰の格付けにある旧帝国大学の医学部に合格するためには、どのくらい勉強すればいいのでしょうか。
実際問題として、1日に何時間の勉強といっても学習を進める個人差や地頭の良さ、勉強する学習環境や周囲のサポート体制など、様々な条件が出てきます。
<旧帝国大学の医学部に入れる学力の目安>
そこで、「どのくらいの学力に到達すればいいか」を見てみましょう。これを見て、自分の目標設定とする目安がわかります。
- 全国模試でだいたい偏差値70以上くらい
- 共通テストの得点率は最低でも9割くらい
- 確実に受かるには二次試験でも8割くらい得点する
東北大学医学部
併願校はどう決めるか
もちろん目指すは旧帝国大学の医学部に合格することですが、他の大学も受けるなら入試は1回ではなく、国公立大学なら本命校を含めて2回あります。私立大学を加えると10回以上の受験機会があります。
<後期日程から選択>
2023年度の入試日程を例に挙げて説明します。
国公立大学の医学部の入試は、他の学部と同様に共通テスト(1月14日と15日)を経て、二次試験を受けます。二次試験は、前期日程が2月25日〜27日ですが、それとは別に後期日程があり、3月12日〜13日で受けられます。
ただし、後期日程を実施する大学は少なく、2023年度は16校が実施しています。各大学のホームページはもちろんのこと、入試日程や試験科目に関する発表については、自分の受験する年度に関わらず、常に普段からよく見ておく癖をつけましょう。
<学費があまりかからない医学部3選>
国公立大学の学費は、私立大学の学費よりも低い金額で済みます。これだけでも国公立大学を志望する理由として大きいです。
では、国公立大学以外で、学費が比較的低めの金額で入学できる大学はあるのでしょうか。ここでは、国公立ではない大学の医学部の中から3校を紹介します。
まず、「防衛医科大学」です。
防衛医科大学の学生は普通の大学生ではなく防衛省の職員(国家公務員)という肩書きになります。入学金や授業料といった学業に必要な諸費用は一切かからない利点がありますが、卒業後は幹部自衛官として合計9年以上の勤務期間を定められています。
次に、「自治医科大学」です。
自治医科大学には「修学資金貸与制度」があります。これは、授業料や入学金、学業を始める準備金をまとめて貸し付ける制度です。卒業後すぐに指定された病院で修学資金を借りた期間の1.5倍にあたる期間、医師として勤務することが必要です。
最後に「産業医科大学」です。
産業医科大学にも「修学資金貸与制度」があります。入学金や授業料など学費の一部に相当する額を公益財団法人産業医学振興財団が貸与してくれます。卒業後の就業で一定の条件を満たせば貸与された額の返還が免除されます。
これにより、6年間で納付する学費をおよそ1,130万円まで抑えることが可能です。
九州大学医学部
まとめ
今回は、「旧帝国大学の医学部」について紹介いたしました。医学部の格付けとしては「旧帝国大学の医学部」が国内で最上位にいることがわかりました。また、偏差値も非常に高く、受験勉強で相当に頑張って取り組まないといけないこともわかりました。
日本の医学は、この「旧帝国大学の医学部」とともに発展してきたと言っても言い過ぎではないくらい、長年の実績と歴史、伝統を誇ります。もし、この「旧帝国大学の医学部」を目指すなら、すぐに必要な勉強にとりかかりましょう。