偏差値は志望校の選択肢や、受験結果に大きく影響します。何を示しているのか、どうすれば上がるのかを知れば、より有利に受験ができるでしょう。
本記事では偏差値の基本から、偏差値を10上げる方法まで徹底的に解説しています。手が届かなそうな志望校でも諦める必要はありません。
偏差値とは?
まずは偏差値が何を示す数値で、どのように変化するものなのかを知っておきましょう。
偏差値は集団の中での順位を示す数値
偏差値とは「平均点からどれくらい離れているか」を表す数値です。
平均点が70点だった場合、テストの点数が70点であれば偏差値は50になります。70点を上回る点数だった場合は偏差値50以上、下回る場合は偏差値50以下です。
偏差値は通常25~75の間に収まります。偏差値が70を超えていれば非常によい成績で、30を下回る場合はその反対です。
偏差値だけでは何位に位置づけているのか明確には分かりませんが「偏差値が70を超えているから上位にいる」「偏差値が47だからもう少し頑張らないといけない」など、指針にできます。
集団が変われば偏差値も変わる
偏差値は同じテストを受けた集団の中で決まるものです。
そのため、集団が変われば偏差値も変わり「同じテストで同じ点数なのに偏差値が違う」という現象が発生します。
よくあるのは、定期テストの偏差値は70を超えているのに、全国模試になると60台になってしまうケースです。校内偏差値と全国偏差値の差ですね。
これは全国模試ではハイレベルな問題が出されることと、その中でも高い点数をとれる子が増えることが関係しています。
偏差値の活用方法
偏差値は集団の中での順位を知る以外にもさまざまな活用方法があります。受験や志望校を決める際は最大限に活用しましょう。
成績の変動を確認する
テストの点数だけでは成績を正確に把握できません。問題の難しさで点数は大きく変わり、簡単なテストで90点を取ることと、難しいテストで70点を取ることでは、どちらが優秀なのか判断が困難だからです。
偏差値はそのときの平均点を元に算出されるため、問題の難易度に左右されません。
前回の偏差値を上回れば成績上昇、下回れば下降しているとはっきり判断できます。
教科別に得意・不得意を把握する
偏差値は、教科ごとの成績比較にも使えます。
教科別に偏差値を並べてみると、得意科目と不得意科目が見つかります。
科目 | 数学 | 国語 | 英語 | 世界史 |
---|---|---|---|---|
偏差値 | 59.2 | 65.0 | 69.3 | 55.4 |
このような結果だった場合、偏差値が低い世界史は苦手、偏差値が高い英語・国語は得意であることが見えてきます。
内申点や総合点数を上げるには、得意教科を伸ばし、苦手教科の克服が必須です。偏差値で得手不得手を把握し、教科別に対策をすれば成績の大幅な向上につながるでしょう。
志望校を決める参考にする
一般的に志望校は、現在の偏差値から3~5の範囲内が無理のない選択だとされています。偏差値は5くらいまでであれば上げられる可能性が高く、入学後の学習ペースやレベルにも大きな差が生まれにくいからです。
偏差値が5以上高い学校への合格率を上げるためには努力が必要です。
どうしても行きたい学校がある場合は、その学校の合格ラインを早めに知り、明確な目標を掲げて学力を向上させましょう。
子どものモチベーション維持
受験勉強のモチベーションの維持には、明確にわかる成果が欠かせません。
偏差値は数字になって現れるため、自分の偏差値と志望校の合格ラインとされている偏差値との差がくっきりと見えます。
努力した分偏差値が上がり、着実に合格に近づいていることを子どもが理解できれば、前向きに勉強ができるでしょう。
偏差値の算出方法
さまざまな形で受験に活用できる偏差値は、学校の定期テストや全国模試などで知ることが可能です。それらの結果を待たずに知りたい場合は、自分で計算する方法があります。
偏差値を求める計算式
まずは偏差値を求める計算式を解説します。
【個人の得点】
偏差値を求めたいテストの個人の得点数です。
【平均点】
偏差値を求めたい集団の平均点です。学年偏差値を求めたい場合は学年の平均点、クラスの偏差値を知りたい場合はクラスの平均点で計算します。
ここで大きなポイントになるのが「標準偏差」です。あまり知られていない言葉で少し複雑な部分がありますので、次の項目で詳しく解説いたします。
標準偏差とは?
標準偏差とは、シンプルにいうと「その集団での得点のばらつき具合」のことです。
たとえば、同じテストを受けた人の得点が、70点以上に集中している場合はばらつきが少ない、40点~90点まで広く分布している場合はばらつきが多いと考えます。
ばらつきが少ないほど標準偏差は低くなり、ばらつきが多いほど高くなります。この数値がどのように影響するか、偏差値を求める計算式を使って見てみましょう。
条件:得点70点、平均点65点
(70-65)÷ 20×10+50 =52.5
(70-65)÷ 10×10+50 =55
このようになり、標準偏差が20だと偏差値52.5、10だと偏差値55と変化します。同じ得点・同じ平均点だとしても、標準偏差が高い(ばらつきが多い)ほど、偏差値が下がりやすくなるわけです。
標準偏差も計算で求められますが、平方根を使った複雑な式になります。また、複数人の得点数も必要なため、個人で求めるのは難しいです。
どうしても計算したい場合は、学校や塾の先生に相談してみるとよいでしょう。
偏差値の目安と全体の割合
偏差値は高いほど受験に有利です。しかし、偏差値の上昇はテストの得点を上げることほど単純ではありません。それは上位に行くほどに人数が減るからです。
偏差値の割合
まずは偏差値の上位人数がどれくらいなのかを知っておきましょう。
偏差値 | 割合 | 何人に1人か |
---|---|---|
50 | 50% | 2人に1人 |
60 | 16% | 6.3人に1人 |
70 | 2.3% | 44人に1人 |
80 | 0.135% | 740人に1人 |
90 | 0.00317% | 31500人に1人 |
これはざっくりとした表ですが、偏差値70は狭き門であり、クラスに1人いるかいないかのレベルであることがわかります。
また、この表は以下のように言い換えることも可能です。
偏差値60を超えるには6人~7人の中で1位の成績が必要。
偏差値70を超えるには44人の中で1位の成績が必要。
偏差値80を超えるには740人の中で1位の成績が必要。
あくまでも目安ではありますが、偏差値が10違うだけでこれほどまでに難度が変わります。
テストの点数を10上げることは、努力や問題の内容次第で可能です。しかし、偏差値を10上げることはとても難しく、狙うのであれば本人のやる気に加えてプロの指導が欠かせないレベルだと覚悟して挑みましょう。
大学受験で見かける「BF」
大学受験について調べていると目にすることがある「BF大学」という言葉。このBFとは「ボーダーフリー」の意味で、偏差値による合格ラインの設定がない大学のことです。
BF大学になる原因は、受験生が少なくてデータが集められず、合格ラインが出せなかったことにあります。「偏差値が低くても誰でも合格できる大学」と思われがちですが、BF大学=偏差値が低い大学だとも言い切れません。
ですが、データが取れないほど受験人数が少ない(=人気がない)大学であることは間違いなく、どこにも入学できなかった生徒が集まりやすいです。
その結果、現在では偏差値を低い大学を示す「Fラン大学」とほぼ同義語として使われています。就職での有利性や偏差値を重視する場合は、よい影響はありません。
その学校に特別な魅力や、どうしても入学したい理由がない限りは、ほかの大学を選んだ方が失敗しないでしょう。
偏差値の注意点
偏差値は成績や志望校への合格率を把握するための重要な情報です。しかし、受け止め方を間違えるとマイナスに働くことも。偏差値を見るときの注意点をお話します。
母集団で偏差値は変化する
偏差値はあくまでも「特定の集団での成績」を数値にしたものです。
80点を取ったテストで、Aの集団では偏差値が65だったとしても、Bの集団では58、Cの集団では72のように、大きく変動します。平均点がクラスによってばらつきがあるのを想像するとわかりやすいでしょう。
そのため、学校内のテストで偏差値が志望校の合格ラインを超えていても、全国模試では超えていないことが多々あります。
合格ラインと比較する目的で偏差値を見るときは、全受験生により近い集団での偏差値を見るようにしましょう。
偏差値と合格難易度はイコールではない
大学受験では「傾斜配点」というシステムがあります。
傾斜配点というのは、大学が設けている基準によって科目ごとに合格のラインが異なる仕組みです。
どの科目を重視するかは大学によって違い、例えば理数科を重視する大学・学部の場合は理数系の科目だけ点数を2倍にして200点満点にすることがあります。
こうした大学の場合、仮に偏差値が合格ラインを超えていても、重視される科目の成績が悪いと不合格になることがあります。
大学受験に備える場合は、偏差値に加えて傾斜配点の傾向も見るようにしましょう。
偏差値が足りなくても合格の可能性はある
偏差値が足りていない場合も合格する可能性はゼロではありません。
前述した傾斜配点があることに加えて、塾や学校が発表する合格ライン偏差値は「合格率が80%ほどの偏差値」だからです。
「これくらいの偏差値があればほぼ合格できる」という指標であるため、必ず合格・不合格が決められているラインではありません。
偏差値が5以上足りていないと難しいかもしれませんが「あと少しが届かなかった」という場合は、チャンスにかけるのも選択肢のひとつです。
本番までの努力や出題内容によっては、可能性があります。
偏差値が高いことを理由に選ぶのは危険
偏差値が高い学校は、当然優秀な人物が集まる素晴らしい学校です。
しかし、数字だけを見て志望校を選んでしまうのはよくありません。
- 何を学びたいか
- 校風は自分に合っているか
- 無理のない学力か
- 偏差値以外に魅力はあるか
これらを一度考えてみましょう。
将来のことを考えれば、より偏差値の高い学校を選ぶことは間違いではありません。
ですが、入学後に校風が合わなかったり、学力がついて行かなかったりすると、勉強に身が入らず成績はどんどん落ちてしまいます。
何年も生活の中心になり、将来を左右する学び舎ですから、偏差値以外の部分も見ることが大切です。
偏差値を10上げるための考え方
偏差値を10上げたい場合は、闇雲に勉強するだけでは難しいです。必要な勉強時間や残された時間を考えましょう。
各科目で必要な点数を知る
まずは各科目で何点を取れば偏差値が10上がるのか計算し、どれくらいの開きがあるのか把握することからはじめましょう。
偏差値を1上げるには、標準偏差×0.1の点数が必要だとされています。標準偏差が20だった場合、2点上げられれば偏差値が1上がる計算です。偏差値を10上げたい場合は、その科目だけで20点あげる必要があります。
ただし、どんなによい点数を得られたとしても、周りも同じように高得点を取っていると思うように偏差値が上がりません。
難しい問題で高得点を取れることと、平均点を常に大きく上回ることを考えて、ステップアップし続ける勉強を意識することが大事です。
必要な勉強時間を計算する
基礎学力や問題の難しさにも左右される部分ですが、偏差値を1上げるための勉強時間は1科目あたりプラス30時間以上必要です。
10上げたい場合は、今よりも300時間以上多い勉強時間が必要になるわけですから、一朝一夕でできることではありません。
より効率よく勉強して偏差値を上げるには、偏差値が低い科目から優先して勉強すると効果的です。何が苦手なのかをしっかりと把握し、苦手を克服する勉強と、得意を伸ばす勉強を両立させましょう。
期間を決めて計画を立てる
必要な点数と勉強時間が見えてきたら、残された期間を考えて計画を立てます。
偏差値を10上げると考えて、実際に計算してみましょう。
偏差値を1上げるための勉強時間:30時間
対象科目:3科目(英語・国語・数学)
30時間×10(偏差値)×3科目 = 900時間
となります。
半年で達成する計画で計算すると900時間÷183日=約4.9時間となります。今の勉強に毎日約5時間プラスして勉強をすれば、偏差値を10上げられる計算です。
ただし、この計算は目安でしかありません。勉強の効率でこの時間と結果は大きく変わります。
本人のやる気と効率のよい勉強法があれば、3ヶ月~半年で目標を達成することも夢ではありません。
偏差値を上げるための8つの方法
偏差値を上げるにはなによりも勉強が重要です。8つのポイントを押さえて、限られた時間で効果的な勉強をしましょう。
1. まずは徹底的に基礎を固める
どの教科にもいえることは、基礎がとても大事であることです。試験でよい点数を取るには難しい応用問題を解く力も必要ですが、基礎を飛ばしては絶対に解けません。
「ここはちょっと苦手だけどまぁいいか」と思っているような部分があれば、一度基礎に戻って苦手意識がなくなるまで勉強しなおしましょう。
そうすることで詰まっていた問題が解けるようになったり、より難しい問題を解く力が身についたり、解く力の底上げができます。
2. 苦手科目を克服する
誰にでも得意・不得意はあるものです。数学が苦手、英語が苦手、現代文が苦手……子どもによって苦手とするものはさまざまですが、“苦手だからとりあえず後回し”はよくありません。
まずは偏差値が低い科目を洗い出し、ほかの教科に近づけるように集中して勉強しましょう。
入試では複数科目の総合点数や偏差値が見られます。1科目でも足を引っ張っているものがあると、そのせいで合格ラインを下回るかもしれません。
苦手で点数が低い科目は、考え方を変えれば伸びしろがあるということです。80点を100点にすることは難しくても、60点を80点にできる可能性は十分にあります。
一番点数を取れていない分野を分析し、大幅な点数アップを狙ってみましょう。
3. 同じ間違いをしないようにする
苦手な問題や解き癖がついている問題は、同じ間違いをしやすいです。「わかっているはずなのに凡ミスをしてしまう」「復習したのに覚えていなかった」で点数を失うのはとてももったいないので、同じ間違いをしなくなるまで反復学習をしましょう。
繰り返し同じ間違いや、似た問題でミスをするのには何らかの原因があります。どこで間違えるのか、何を勘違いしているのか、など、本人では分からない部分も多いです。
塾やご両親のサポートでウィークポイントを見つけ出し、克服するようにしましょう。
4. 集中できる環境を見つける
偏差値を上げるための勉強は基本的に長期戦です。毎日同じ自分の部屋で勉強をしていると、集中できなくなる日があります。
そんなときに備え、図書館や学校・塾の自習室など、環境を変えて集中できる場所を見つけておきましょう。
とくに塾は同じ目標に向かっているライバルや同士がいる場所で、刺激になります。1人だと油断してしまいがちな子どもの場合は、塾の時間を増やすのもよいでしょう。
5. 参考書選びに時間をかける
参考書選びでよくある失敗は、合わないことを理由に次々と新しいものを買い集めることです。
自分に合った参考書を見つけることは大事なのですが、わかりにくいからといって簡単に買い替えるのはよくありません。最初に選んだ1冊は完璧に理解するつもりで選びましょう。
- みんなが買っていて評判がいいから
- 前のものよりわかりやすそうだから
- 志望校に受かった先輩が使っていたから
- 少し背伸びしてがんばりたいから
こうした理由で選んだ参考書は失敗しやすいです。
「今の自分のレベルに合っていること」を重視し、構成や文章が理解しやすいものを選びましょう。
6. 塾に通うまたは通う場所を変える
偏差値を大きく上げたい場合は、プロのサポートが重要です。
これから本格的な勉強に入るなら通塾を考えましょう。思うように成果が上がっていないのなら、塾を変えるのもよいです。
塾の成果は講師のレベルや教え方によって大きく変わります。自ら率先して通えることに加えて、志望校との相性や成績の変化を考慮して検討しましょう。
7. 目標と達成度を常に意識する
明確な目標と達成度は、勉強のモチベーションを上げます。
「目指せ〇〇学校!」や「目指せ合格!」のようなあいまいなものではなく、「〇月までに偏差値10アップ」のように、明確な目標を掲げましょう。
そして定期テストや模試の度に達成度を確認し、勉強の成果を明確にします。
そうすることで勉強の意欲が増し、前向きな気持ちで取り組みやすくなるでしょう。
8. 体調管理と息抜きも大切にする
偏差値を上げるには、誰よりも多く勉強するつもりで挑む必要があります。
しかし、根を詰めすぎて体調を崩したり、パンクしたりする子どもも少なくありません。
食事はバランスよく、睡眠時間は十分にとって体調管理をしつつ、適度に遊びや運動を入れてリフレッシュするようにしましょう。
健康な心身は効率的な勉強に欠かせません。
志望校の偏差値に届いていなければ受験してはいけない?
ここまでお話してきたように、偏差値は志望校選びや合否判定の目安になるものです。
当然偏差値が大きく届かない学校には合格できる可能性が低く、学校からも推奨はされません。
しかし、受験してはいけない決まりがあるわけではありません。
どんなに高い目標でも、目指さなければ何も始まらないわけですから、どうしても行きたい学校があれば目指してみましょう!
勉強は将来の選択肢を拡げることに繋がります。仮に目標とする学校に受からなかったとしても、偏差値が上がった分行ける学校は増えています。
限られた期間で大幅に偏差値を上げたい場合は、ぜひプロの手を借りてください。効率的な勉強で、苦手を克服して得意を伸ばせます。
マナビバでは学ぶ楽しさを大切にしながら、志望校への合格を一緒に目指せますので、これからがんばりたい!というお子様はぜひご入塾ください。
【個別指導塾 マナビバ】
【まとめ】プロのサポートで偏差値アップを目指そう
偏差値を10上げるには、膨大な勉強時間が必要です。受験までの時間が短いほど、負担は大きくなってしまいます。
しかし、プロの塾講師ならより効率的な勉強方法で、確実に学力を伸ばして偏差値に結果を反映させることが可能です。
諦めるにはまだまだ早いので、もうひとがんばりしたい!とお考えの際は、ぜひご相談ください。